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声を鍛えること
歌の表現を行なう上での制約を減らし、より自由な声の可能性を広げるのが私のヴォイストレーニングの目的です。練習はより理論的に考え、本番ではそれらを忘れ、直情的に歌うことを理想としています。
発声法や歌唱法などのレッスン内容につきましては、ここに詳しく書くことは出来ませんが、ワンポイント的なアドバイスを書きました。練習の参考にして頂ければと思います。
声が出るしくみについて
意外に思うかもしれませんが、声が生まれる原理は指パッチンと同じです(笑)指パッチンの上手な人はパ〜ン!と抜けの良い音がしますよね?この時、音が発生するきっかけとなる原音は、指が手のひらに当たる音です。
試しに一本の指を手のひらに当ててみましょう。ポッと乾いた音がするだけです。しかし、実際の指パッチンは指が手のひらに当たった瞬間、指は握り込まれています。
握り込まれた指と手のひらの間に出来る空間がスピーカーの役割を果たすため、原音が共鳴増幅され、パ〜ン!と大きな音になるのです。
私達が声を出す場合、まず呼吸を行い、肺に空気が入ります。吐き出す呼気が喉仏の中にある声帯を振動させ原音が生まれます。このときの音は喉頭原音と呼ばれ、響きの無い、聞こえない程小さな音なのです。
この喉頭原音が喉頭(喉の中)や口腔(口の中)
鼻腔(鼻の中)などの共鳴腔に共鳴増幅され声になり、舌や歯を使って調音され言葉が生まれます。
声に個性が存在するのは共鳴腔の形が人それぞれ違うからに他なりません。逆に声が似ている場合は共鳴腔の形が似ているということです。
この共鳴の効率を高めることで、より響きの深い、抜けの良い声を生み出すことが出来るようになります。
ここで一つ注意です。
発声法には身体の一部に声を響かせる言葉がありますが、実際に声が共鳴する場所は喉頭、口腔、鼻腔以外には存在しません。
ヘッドヴォイスとは呼んでも、本当に頭蓋骨から音が出るほど振動したなら脳が吹き飛んで死んでしまいます。しかし、頭蓋骨に響かす感覚で声を出すと確かにそのように聴こえますし、体感的にもそう感じます。
そういったことからチェストヴォイス、ヘッドヴォイスといった呼び方が存在するのでしょう。あくまで比喩表現であることをご理解下さい。
さて、話を元に戻しましょう。
より響きの深い声を出すためには喉頭、口腔、鼻腔に効率良く声を共鳴させる必要がありますが、多くの人が充分に使いこなせていない部分、それが鼻腔共鳴です。
特に鼻腔はブライトで抜けの良い倍音を生み出す場所ですので、声の抜けの悪さに悩む人は鼻腔を鳴らす訓練を積むことにより、解決に向かうことが出来ます。鼻詰まりに悩む人は耳鼻咽喉科に相談してみると良いでしょう。
また、鼻腔共鳴を鍛えることは高音域を発声する上でも重要な下地作りとなります。
簡単に出来るトレーニング方法をお教えしましょう。
口先を閉じたまま、口の中に小さな空間を作ります。イメージ的にはピンポン玉を口に含んだ感じです。この状態で、鼻と口の中にびりびりと響く様にハミングします。鼻の上部から眉間にかけて響かすようなイメージで行ってください。様々な音程で試してみましょう。
鼻腔を鳴りやすくするのに効果があります。
そして高音発声をするために必要な下地作りとして、日頃から裏声を鍛えておく必要があります。ミックスヴォイス、ヘッドヴォイス、ホイッスルヴォイスといった名前で説明している発声法は裏声の応用と言えます。
基礎となる裏声を低い音域から高い音域までまんべんなく鍛えておきましょう。だからと言って地声のトレーニングを疎かにしてはいけません。
鍛えない声種は衰えますし、伸びて行かないからです。
音楽や歌を分析しながら聴く
アーチストの歌をコピーする際、日頃から細かく分析しながら聴く癖をつけましょう。良いシンガーはさらりと歌っているようで、実は細かいニュアンスを付けながら歌っていることが多いのです。
ただ聴いているだけではプロの細かい仕事を聞き逃してしまい、どこに自分の歌との違いがあるのか気付くことが出来ません。
コピーをすると個性が失われると思う人もいるかもしれませんが、『芸術は模倣から始まる』の言葉通り、質の高いオリジナリティというのは、沢山のお手本から学び取ったものを自分なりにアレンジすることによって生まれるものです。沢山のアーチストの歌い方をコピーしながら、深みのある、自分だけのスタイルを作り出して行きましょう。
ただし、コピーとは言ってもアーチストの声色を真似るのではありません。
誰かのような声を目指すのではなく、自分の最高の声探しがヴォイストレーニングの目的です。トレーニング無しで自分の持つ能力を100%発揮出来る人はいません。あなたはまだ聴いたことの無い自分の最高の声を持っているはずです。自分の可能性を疑う前にまずはやってみてはどうでしょう?
トレーニングは他でもない自分のために行うものです。決して損はしないはずですよ。
自分の声を聴く
日頃から自分の歌声を録音して聴くようにしましょう。
思い通りに歌えなかった時などは聴くのが辛いと思いますが、聴くことで自分の反省材料を見つけることが出来ます。自分の声が気に入らないからと言って簡単にあきらめてはいけません。
私も裏声で歌い始めた時は複数の友人から『君の裏声は使えないレベルだから地声のみで歌った方が良いね』と言われてしまいました。
自分でも内心自信が無かったので『やはり言われたか・・。』という思いでしたが、『今はダメでも練習さえ続ければいつかは・・。』という気持ちで練習を続けました。もしもあの時、諦めてしまえばヴォイストレーナーになることも無かったと思います。何事もそう簡単に結果が出るものではありません。
練習を止めてしまえば、その時点で貴方の声の進化も止まってしまうことを忘れないで下さい。
シンガーに必要なメンテナンス
『喉に良い飲み物や食べ物はありますか?』これは生徒さんからよく受ける質問です。
喉飴やハチミツ、オリーブオイルなど、喉に良いとされるものはいくつかありますが、飲食物は食道を通り胃に向かうため、気管の中にある声帯に直接触れることはありません。基本的にはあまり気を使う必要はないでしょう。
ただし、激辛の食べ物などの刺激物を歌う前に摂取するのは避けた方が無難です。喉の粘膜が荒れたり、鼻水が出たり、これから歌うぞ!!という気分にはなれません。
ウーロン茶も喉の油分を洗い流してしまうので、歌う直前はオススメ出来ませんね。コーヒーなどは利尿作用があるので理論上好ましくないのですが、影響には個人差があります。 平気な人は気にせず飲んでも問題無いでしょう。
又、人によりアレルギーを起こす飲食物があるなど、体質の問題もあります。他人が良いと感じる飲食物が自分に合うとは限りません。
普段から、自分の体質に合わない飲食物を認識しておくと良いですね。
栄養価の高い食事を取り、体調に気を配る。そういう意味ではスポーツ選手の体調管理と変わりません。
そして歌う際には十分な水分補給を心がけるようにしましょう。
体内の水分が不足してしまうと声帯自体が乾燥してしまいます。
湿り気は、声帯がスムースに振動するためのオイルの役割を果たすので、乾燥した状態で声を出し続けるとすぐに声帯を痛めてしまいます。
そういう意味では水が一番喉に良いと言えるかもしれません。
喫煙は高温の煙が直接声帯に触れ、水分を奪うので決して良いことはありません。その影響には個人差がありますが、タバコを吸う人は充分注意の上での喫煙を心がけましょう。
アルコールも少量なら問題無いのですが、大量に摂取した場合、分解するのに体内の水分が消費され、結果、声帯は乾燥します。脳の働きも鈍るので歌う際はお勧め出来ません。
そして当然なのですが睡眠をしっかり取ること。痛んだ声帯を回復させる方法はこれしかありませんので・・。
その他の日常のケアとして
帰宅時のうがいと手洗いは風邪の防止になります。
冬季の乾燥時、特に睡眠時の部屋の加湿を心がけましょう。
睡眠中は喉が無防備になりがちなのでマスクをして寝るのもトラブルの防止になります。マフラーをして喉の温度を下げないことも風邪の防止になります。
花粉の季節は鼻うがいが有効です。
コップに小さじ一杯の塩とぬるま湯を入れ、鼻からぬるま湯を吸い上げて口から吐きます。塩が入ることによってしみたりしないんですよ。とてもスッキリするはずです。
高音を発声する上で鼻の通りはとても大切です。
私は花粉のシーズンのみならず年間を通じて鼻うがいでメンテナンスをしています。
歯並びについて
歯並びが悪く、歯と歯の間に隙間が出来ている場合、そこから息が漏れ、きれいな発音をするのが難しくなります。
歌詞や言葉をはっきりと聴かせるために歯の矯正や、歯並びを治すプロシンガーやアナウンサーは少なくありません。
親不知を抜いたら声が変わった!!なんて例もあるそうです。あなたの歯並びはどうですか?隙間がある人は歯医者さんに相談してみると良いかもしれません。
基礎体力
歌はちょっとしたスポーツです。
体が健康で体力があるに越したことはありません。日頃からジムに通うなど、適度な運動を心がけましょう。
あと、昔から腹筋を鍛えると歌が上手くなるようなことを言われていますよね?もしもそうならプロスポーツ選手は皆歌が上手いということになってしまいます。
確かに人間は発声する際、腹筋を使いますが、腹筋だけで声を出す訳ではありません。
『お腹から声を出す!』などと言いますが、実際に声を出すのは声帯です。
腹筋は肺から空気を送り出すための補助をするものです。腹筋だけ一生懸命に鍛えても歌が上手くなるなんてことはありませんのでご注意を。
ただ、日本人の場合、基礎的な筋力自体が不足気味な人が多いようです。
ムキムキになる必要はありませんが、軽めの筋トレを日常的に行うと良いと思います。
胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
首の正面左右対称に胸鎖乳突筋があります。
両鎖骨から両顎にかけて喉仏を挟むようにして、やや斜めVの字気味に付いている筋肉です。普段の生活では凝ったりする自覚はありませんが指圧を加えて初めて痛みを感じます。
私はマッサージ師の方に偶然この筋肉の凝りを発見してもらい、ほぐして頂いてからは楽に声が出るようになりました。
同時期に発声法を変えたので、そのせいもあるかもしれませんが、筋肉が凝っている状態が歌う上で好ましい状態では無いことは言うまでもありませんのでマッサージを試してみる価値はあると思います。
ただし、私の場合、首に限らず全身の筋肉が凝りやすいタイプです。そうでない体質の方の場合は当てはまらないかもしれません。参考程度に考えて下さい。
練習の時間帯
調子の良い時は朝起きてすぐに声が出たりしませんか?
この状態を作りやすくする方法を教えましょう。
夜寝る前に練習するよりも、朝起きてから3〜4時間程度が過ぎ、喉が起きてきた頃に練習した方が良いです。
睡眠を取ると喉がリセットされてしまいますが、一日の活動時間中、出来るだけ長い時間“歌える喉”の状態で過ごすことでリセットの幅を抑えることが出来ます。
喉のコンディションを一定に整えるのに有効ですよ。
呼吸法について
歌を歌う際、最初に行われる作業が呼吸です。
呼吸には肺呼吸と腹式呼吸の二種類があります。
人間の体は呼吸を行う際、肺以外の場所に空気が入る事はありません。ではなぜ、腹式呼吸と呼ぶのでしょう?
一般的に私たちがスポーツなどを行う際は肺呼吸で呼吸しています。これは横隔膜を下げることなく、肺の上部に息を吸う呼吸です。肺の上部だけに息を吸うと、膨らもうとする肺が、硬い肋骨に阻まれてしまい、大量の空気を吸い込むことが出来ません。
日常生活で肺呼吸をしている我々の場合、意識的なトレーニングを積まない限り肺呼吸で歌ってしまうようです。
しかし、実際に歌う際は腹式呼吸が適しています。
腹式呼吸のメリットとは
1.
肺呼吸よりも大量の息を吸い込む事が出来る為、よりロングトーンを歌う事が出来る。
2. 息を深く吸い込むことでピッチなどが安定した声になる。強弱などのメリハリも付けやすい。
3. 息を吸い込む際のノイズが小さい。
などが挙げられます。
腹式呼吸を覚えるメリットはとても大きいので是非ともマスターして頂きたいと思います。
通常の肺呼吸は、息を吸い込んだ際、胸の上部が膨らみ、肩が上がります。
対して、腹式呼吸では息を吸い込んだ際、肩は上がりません。
横隔膜が下がる事によって内臓が圧迫され、腹部が膨らみ、同時に背中と両腰が膨らみます。
肺に息を吸うというより、腹と背中と腰を同時に膨らまして空気を入れる感覚です。
息を吸い込む時に肺の上部が大きく膨らみ、肩が上がってしまうようでは正しい腹式呼吸とは言えません。
実際には肺に空気が入るのですが、まるでお腹に空気が入るかのように見えることから腹式呼吸と呼ばれるようです。
そういう意味では背呼吸とも腰呼吸とも呼べるのかもしれません。
そのため、腹式呼吸を教える際、『背中に息を吸え』とか、『腰に息を吸いなさい』と指導するヴォイストレーナーの方もいらっしゃいます。
又、満腹時には膨らんだ胃に邪魔されてしまい、横隔膜が下がりきれなくなるので、歌う二時間前までに食事を済ませておきたいところです。
鏡の前に立ちながら自分のフォームをチェックしながら練習すると良いでしょう。
(注) ポップスにおいては必ずしも腹式呼吸で歌わなければならない決まりがある訳ではありません。表現によってはわざと胸式呼吸で歌われる場合がありますし、実際に人気のある歌手の中には腹式呼吸を全く使わない人も沢山います。
ですが、全ての人が同じ才能とスタイルを持ち合わせている訳ではない以上、腹式呼吸を身に付けておくことは決して損をすることではありません。
幅広いテクニックを身に付けることは、楽曲を歌う際、より幅広い表現の選択肢が増えるということです。
もちろん身に付けたテクニックを常に全部使う必要もなく、テクニックをどう使うか?のセンスが問われるところです。
口角を上げる
声の抜けと滑舌を良くするために口角を上げるのが有効です。
上唇を上げて前歯を全部見せる気持ちで笑顔を作って発声してみましょう。
声が明るく抜けてくるはずです。
ただし、口を横に大きく広げることは胸鎖乳突筋を緊張させやすくしてしまうため、限界近くの高音域において喉のフォームを崩しやすくなります。
この場合、口を縦に開けるようにすることでフォームの崩れを回避できます。
滑舌トレーニング
歌う上で必ずしも言葉の発音がしっかりしていなければならない訳ではありませんが、滑舌を良くしておくことは声の抜けにも大きな影響をもたらします。
なぜなら滑舌のために必要な口の開け方が声の倍音周波数に影響を及ぼすからです。
日本語というもの自体、口を大きく開けなくとも発音することができます。
鏡の前で「あ・い・う・え・お」と発音してみましょう。
「あ・い・え」の発音時、上下の歯がしっかり見えていますか?
大抵の人は上顎の前歯が見えない状態で発音していると思います。
上唇を上げて前歯を見せることを、口角を上げると言います。
声の抜けを良くする上で口角を上げることは絶対条件の一つと言えるでしょう。声を美しくするという視点からもプラスだと思います。
余談ですが私の友人でアメリカのフィラデルフィアから来た黒人男性の方がいます。彼が日本語を話すと、まるっきり普通の日本人のように聴こえます。それが英語を話すとまるでCNNのキャスターのようにリッチで豊かな声になるんです。もう、出てる周波数が全く違います!!
あまりの激変ぶりに彼にその理由を質問してみました。
すると彼は言いました『日本語は口先だけで発音できるからね。英語は顔全体を使わないと発音できないんだ。』
補足すると日本語はあまり口を開けなくても発音できてしまうということなんですね。ですからアナウンサーの学校などでは口角を上げて唇を開ける練習をします。これが歌声にも効くんです。
試しに顔の前に固い下敷きなどを当て、自分の声がよく聴こえる状態にして、上唇を上げない「あ〜」と上唇を上げて前歯を見せるようにして「あ〜」と声を出してみましょう。圧倒的に上唇を上げた方が声が明るくなるはずです。
では口角を上げるエクササイズをやってみましょう。必ず鏡の前で行ってくださいね。頬の筋肉を上に上げて前歯を全部しっかり見せます。
思いっきり笑顔にすれば必ず上手くいきますよ(笑)
それが「あ・い・え」を発音する際の基本になります。特に「い」は口を横にも広げるようにします。
その状態から「あおあおあおあおあおあおあおあおあおあお」と素早く繰り返しましょう。口角を上げる筋肉を上手く使えないと「あ」の発音時、口角が下がってしまいます。口角が下がらないようにしながら出来るだけ素早く繰り返してください。
同様のやり方で「いういういういういういういういういういう」も行ってください。
二つのエクササイズに共通するのは二つの母音の口の開き方に距離があることです。だからこそ唇の開きを鍛えるのに適している訳です。
他に舌の動きを鍛えるのに「らならならならならならならならならならな」と素早く繰り返すやり方があります。下顎はあまり動かさずに舌の動きだけで行ってください。「ななななななななななな」に聴こえないよう頑張ってください。
他に「れなれなれなれなれなれなれなれなれなれな」と同様に繰り返すトレーニングも行ってください。
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